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チャノキ

世の中には、茶を含め、昆布茶やどくだみ茶のように、様々なお茶がありますが、本来は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)という学名の“チャノキ” からつくられたものを、「茶」と呼んでいます。

 

チャノキは、葉の大きさ、木の高さなどの特徴から、アッサム種中国種に大別されています。

 温帯では耐寒性の強い中国種が栽培されており、葉は小さく灌木性でタンニン含有量が少なく、主に緑茶用原料として用いられます。

 

亜熱帯や熱帯では耐寒性の弱いアッサム種が栽培されており、葉は大きく高木性でタンニン含有量が多く、主として紅茶用原料として用いられます。近年では国産の紅茶や烏龍茶も作られており、明確に区別されているわけではありません。

また、お米に「こしひかり」、「あきたこまち」、「ササニシキ」、「ひとめぼれ」・・といった様々な品種があるように、お茶にも品種があります。2013年12月現在、農林水産省に品種登録されているものだけでも66種類あります。早生種、中生種、晩生種に分けられ、これらを組み合わせて栽培し、摘採時期をずらして収穫するなど工夫されています。

 

 

 

中でも、日本で一番多く作られているのが「やぶきた」で、75.5%を占めています。そして、「ゆたかみどり」が5.2%、「おくみどり」2.0%、「さえみどり」が1.8%、「さやまかおり」1.5%、「かなやみどり」1.3%、「あさつゆ」1.0%・・と続きます。

代表的な品種

「やぶきた」

 

東北から沖縄まで、全国の茶畑の75.5%を占めます。中生種で、普通煎茶、深むし煎茶、かぶせ茶、玉露など幅広く親しまれています。

日本で茶の品種研究の先駆となったのが「やぶきた」を発見した杉山彦三郎翁です。杉山氏は、安政4年(1857)に静岡県阿部郡に生まれ、明治10年から優良系統の選抜育種試験を行ない、優良品種「やぶきた」を発見しました。地域適応性が広く、耐寒性も強く、収量・品質に優れるため、全国に広まっていきました。甘みのある濃厚な滋味と優雅な香気を持っています。

 

「やぶきた」という名前は、竹藪の北側にあったことからきており、樹勢・品質の優秀性が認められ、昭和28年農林省に茶樹登録制度が設けられるとともに奨励品種に指定されました。現在、杉山氏が選抜した母樹は、昭和38年に静岡県の天然記念物に指定され、静岡県立美術館(静岡市駿河区谷田)入口そばに保存されています。

 

写真:JA静岡市茶業センター

 

 

「ゆたかみどり」

「やぶきた」に次いで二番目に栽培面積が大きく、95%が鹿児島県で栽培されています。早生種で、煎茶として飲まれています。

「あさつゆ」の実生で、農林省茶業試験場(静岡県金谷町)でY-2として育成され、1966年に鹿児島が命名登録を行いました。耐寒性に弱いですが、収量は全茶期を通じて多く、被覆を行い、蒸しを強くすることで濃厚な水色と味になります。

「おくみどり」

 

茶業試験場(静岡県金谷町)で、「やぶきた」と「静岡在来16号」を掛け合わせて育成させたものです。晩生種で、耐寒性が強く、さわやかですっきりとした香味があります。

 

待ち望んだ優れた晩生の緑茶用品種という意味から命名されました。鹿児島、京都を中心に、近畿地方、九州地方で栽培され、玉露や碾茶(抹茶の原料)としても高く評価されています。

 

「さえみどり」

 

茶業試験場(鹿児島県枕崎市)で「やぶきた」と「あさつゆ」を交配した中から選抜された品種です。1990年に品種登録されました。早生種で耐寒性も強く、品質にも優れています。鮮緑色で上品な芳香があり、強い旨みが人気です。鹿児島を中心とした九州一帯、静岡県などで栽培されています。

 

最近、農研機構野菜茶業研究所は、「さえみどり」と「そうふう」の2品種が、「やぶきた」に比べて”ケルセチン配糖体”をとくに多く含む品種(約2.5倍)であることを、平成27年5月20日付で発表されました。ケルセチンはフラボノイド(ポリフェノール)の一種で、一般に玉ねぎやブロッコリーなどに含まれる黄色い色素です。高い抗酸化作用により活性酸素を除去するだけでなく、血液機能の改善や脂質代謝改善などが報告されています。「そうふう」「さえみどり」では、通常引用する濃度のお茶数杯でタマネギ半個分相当のケルセチンが摂取可能といわれています。

参照:全茶連情報 平成27年7月10日付より

 

「さやまかおり」

 

埼玉県茶業試験場で、1985年に「やぶきた」の自然交配実生から選抜されて育成され、1971年に農林登録されました。早生種で、耐寒性が強く、多収な品種で、強い香りが特長です。

静岡、埼玉を中心に、関東から九州まで広い地域で栽培されています。

「かなやみどり」

 

茶業試験場(静岡県金谷町)で、静岡在来6号の「S6」と「やぶきた」を交配して育成されました。1970年に命名登録されています。一番茶の品質はミルクを連想させるような甘い香りに特徴があります。

「あさつゆ」

 

茶業試験場(静岡県金谷町)で、宇治在来種の実生から選抜され育成されました。1953年に命名登録されています。早生種で、天然玉露とも呼ばれ、甘み・旨みが強くて渋みが少なく、品質が高い品種です。ほとんどが鹿児島を中心とした九州一帯と静岡で栽培されています。

 

 

 

「ごこう」

 

京都府茶業研究所が、宇治在来の実生から選抜し育成したもので、揮発性の特徴ある香気をもち、玉露の出品茶用として多用されています。中晩生種で、京都を筆頭に、福岡、静岡で栽培されています。

 

「さみどり」

 

小山政次郎氏が、宇治在来の実生から選抜し育成したもので、てん茶として特に優秀、色沢に冴えがあり、香味に優れています。中生種で、京都を筆頭に、愛知、福岡で栽培されています。

 

「べにふうき」

 

茶業試験場(鹿児島県枕崎市)でアッサム雑種の「べにほまれ」とインド・ダージリンからの導入種「枕Cd86」を交配された紅茶用品種です。中生種で、タンニンが多く、紅茶に製造すると、透明感のある紅色で濃い味わいがあります。緑茶のカテキンより、抗アレルギー成分が高い「メチル化カテキン」が多く含まれていますが、この「メチル化カテキン」は、葉を完全に発酵させて紅茶にしてしまうと、成分の大半が消失してしまうため、緑茶としても製造されています。

 

「静7132

 

静岡茶業試験場で、「やぶきた」の実生から育成された品種。当時は重要視されなかったため「静7132」という系統名がつけられました。現在品種登録はされておらず、販売者が独自に商品名をつけています。製茶により桜葉に似た華やかな香りがあるため、人気を集めています。

品種登録制度

日本には野菜、果樹などの品種登録制度があり、優良な品種を育て、新品種育成者の権利を守り、適切な流通を図ることによって農林水産業の発展を目指しています。お茶に関する品種登録は、農林認定品種と種苗法に基づいて行われています。

※二つの法制度に重複して登録されている品種もあります。

 

①農林認定品種 (旧命名登録品種)

 農林研究開発の一環として、全国各地の独立行政法人、都道府県の研究機関、民間団体及び大学への委託等により、農作物の新品種の育種研究を行っています。育種した品種の中から、品質、収量及び耐病性の向上等の特性が優良と認められる品種を農林認定品種としています。

 

②種苗法

 新品種の保護のための品種登録に関する法律で、品種育成の振興と種苗流通の適正化により農林水産業を発展させることを目的としています。育成者権の維持期間は30年です。

 

③未登録品種

チャノキは、土壌や自然環境が合えば何十年と生育するため、改植を行っていない茶畑には、昔からの在来種が残されていることがあります。2008年現在、全国の茶畑全体の約3%が在来種です。また、試験研究機関には、優良品種として登録されていないものの、固有の種類であると認められ、番号等で整理されているものが多数あります。こうした未登録の品種を掛け合わせて、優良品種が創造されることがあります。(やぶきた×静岡在来16号=おくみどり、やぶきた×静岡在来6号=かなやみどり)