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昔、お茶は薬だった

中国最古の薬物書に『神農本草書』というのがあります。神農は山野を駆け巡り、身近な草木の薬効を調べるために自ら の体を使って確かめました。そして毒にあたるたびに、茶の葉 を噛んで解毒したといわれています。こうして発見された薬により民衆が救われ、神農は薬祖神として祀られるようになりました。

このように中国では古くから、お茶を薬、とくに解毒薬として用いていました。「お茶を一服」という言葉も、この用途から来ているといわれています。

 

日本では、少なくとも奈良時代からお茶が飲まれていたと考えられています。しかしその当時、お茶は大変貴重なものでした。1191年(鎌倉時代)に栄西が禅宗(臨済宗)とともにお茶の種や栽培方法、飲み方などを持ち帰ったことをきっかけに各地に広まっていきました。1211年には『喫茶養生記』(日本最古の茶書)を著しました。「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり」という冒頭から始まり、お茶の採取、効能、製法などを伝えています。

 

また『吾妻鏡』 には、鎌倉幕府の三代将軍・源実朝が二日酔いに悩まされていた際に、栄西がお茶とともに『喫茶養生記』を献上したことが記されています。

お茶に含まれる主な栄養素

お茶にはたくさんの栄養素が含まれています。中でも代表的なのが、カテキン(ポリフェノール)、カフェイン、テアニン(アミノ酸)、ビタミン類です。その機能性や効能は化学でも解明されてきており、私たちの健康をサポートする飲み物として注目されています。

 

■カテキン

お茶の主成分で、ポリフェノールの一種です。苦みや渋みをもたらします。太陽の光をさんさんと浴びることで増えるため、茶畑に覆いをする(被覆栽培)玉露や抹茶に比べて、煎茶が多くなります。特に強い抗酸化作用が知られており、生活習慣病の予防に期待されています。熱湯に溶けやすい性質を持っています。

 

■カフェイン

苦みをもらたす成分です。玉露や上級煎茶など品質が良いとされるお茶に多く含まれ、茶芽が生育するにつれて減少していきます。中枢神経を刺激するので、頭をすっきりさせる効果が期待できます。また、利尿作用もあります。こちらも熱湯に溶けやすい性質を持っています。ただ、胃への刺激が強いので飲みすぎには注意が必要です。

 

■テアニン

お茶に含まれるアミノ酸のうち半分以上を占める成分です。茶畑に覆いをする(被覆栽培)玉露や抹茶に多く含まれ、生育に伴って減少していきます。脳の神経細胞に作用してリラックスさせてくれるほか、カフェインの作用を穏やかにしてくれます。低温でもよく溶け出す性質があります。

 

■ビタミン類

特にビタミンCが多く、他ビタミンEやAなどが含まれています。ビタミンCは水溶性で熱に弱いですが、お茶に含まれているビタミンCは、カテキンに守られ熱に壊れにくい性質があります。また、EやAは不溶のため、抹茶のようにそのまま飲むか、茶殻を料理などに利用しましょう。

成分の機能性と効能

緑茶の健康効果は、様々な成分の相乗効果も大きいといわれています。成分には、水に溶けるもの(水溶性成分)と水に溶けないもの(不溶性成分)とに分けられます。

 

■水溶性成分(20~30%)

カテキン類

(10~18%)

抗酸化、抗突然変異、血中コレステロール上昇抑制、血圧上昇抑制、血糖上昇抑制、抗菌、抗虫歯菌、抗ウィルス、抗アレルギー、消臭 など

複合タンニン

(0.4%)

抗酸化、抗ガン

フラボノイド

(0.6~0.7%)

血管壁強化、抗酸化、抗ガン、消臭

カフェイン

(3~4%)

中枢神経興奮、眠気防止、強心、利尿、代謝促進

複合多糖(ポリサッカライドなど)

(0.6%)

血糖上昇抑制

ビタミンC

(150~250mg%)

コラーゲン生成補助、抗酸化、抗壊血病、かぜ予防、白内障予防、免疫機能増強

ビタミンB2

(1.4mg%)

口角炎予防、抗酸化

テアニン(アミノ酸)

(0.6~2%)

脳・神経機能調節、リラックス効果

γ-アミノ酪酸(GABA)

(0.1~0.2%)

血圧上昇抑制、脳・神経機能調節

サポニン

(0.1%)

抗喘息、抗菌、血圧降下

香気成分

(1~2mg%)

アロマテラピー効果

食物繊維

(3~6%)

胆汁酸排泄促進、血中コレステロール低下

ミネラル類

(3~4%)

亜鉛:味覚異常防止、免疫能低下抑制、皮膚炎防止

フッ素:虫歯予防

マンガン、銅、亜鉛、セレン:抗酸化

 

■不溶性成分(70~80%)

食物繊維

(30~40%)

抗ガン、血糖上昇抑制

たんぱく質

(約24%)

体構成成分(9種類の必須アミノ酸と11種の非必須アミノ酸で構成)。

筋肉、血液、歯、神経などをつくる。エネルギーになるほか、酵素やホルモンとして生理機能の調節をする。

βカロテン

(13~29mg%)

抗酸化、抗ガン、免疫機能増強、ビタミンA生成源

ビタミンE

(25~70mg%)

溶血防止、脂質過酸化抑制、抗ガン、抗糖尿、血行促進、白内障予防、免疫機能改善

クロロフィル

(0.6~1.0%)

消臭効果

ミネラル類

(2~3%)

マンガン、銅、亜鉛、セレン:抗酸化

 

*お茶の種類や栽培方法、製造方法、抽出方法などの条件により、これらの成分の含有量は異なります。

主な茶成分の含有量

茶種別による成分の含有量は以下の通り。 (単位:%)

一番多く含まれるものを赤字に、一番少ないものを青字にしています。

茶種 カフェイン カテキン類(ECG) カテキン類(EC) カテキン類(EGCG) カテキン類 (EGC)

カテキン類

(合計)

アミノ酸

玉露

(上級)

4.04 1.35 0.36 6.65 1.68 10.04 5.36

煎茶

(上級)

2.87 2.47 0.74 8.16 2.77 14.14 2.70

煎茶

(中級)

2.8 1.76 0.91 7.53 3.36 13.56 2.18

抹茶

(上級)

3.85           5.80
番茶 2.02 2.40 1.07 5.58 3.28 12.33 0.77
ほうじ茶 1.93 1.56 0.40 5.00 1.36 8.32 0.20
烏龍茶 3.87 1.16 0.33 3.60 1.01 6.10 1.04
紅茶   3.92 0.67 4.02 - 8.61  

参考:公益社団法人日本茶業中央会「茶関係資料」、静岡県公益社団法人静岡県茶業会議所編「お茶のしずおか」